第6章 ひらいて
部屋で一人きりで勉強していたら、スマホが鳴った。
衛輔からだった。
「今部屋?」
「うん。勉強してる。」
「俺も。凪沙辞書持ってねえ?俺忘れちゃってさ。」
「うん、あるよ。使う?」
「サンキュ。そっち行くわ。」
すぐにドアがノックされて、凪沙は開けてやる。
「どうぞ。」
「親父たちどこ行ったんだろうな。」
「ラウンジでお茶でもしてるんじゃない?」
部屋に入ると、衛輔は机に広げられた凪沙の教科書に目を落とす。
「うわ、世界史うちより進んでんじゃん。さすが私立。」
「勝手に見ないでよ。衛輔のエッチ。」
「はあ!?誰がっ!?」
凪沙が冗談で言ったつもりなのに、衛輔は本気で慌てた。
「何赤くなってんの。」
冷ややかな視線を送られて、衛輔は口を噤む。
「はい、これ使っていいよ。」
凪沙は鞄から電子辞書を取り出して渡した。
「ありがと」