第6章 ひらいて
「しかし、こんな時期にリゾートホテルなんて、ちょっと季節はずれじゃね?」
海に面した大きな建物を目にして、衛輔は改めて言う。
夏なら海風も気持ちいいのだろうが、今は寒すぎる。
「そう言うなって。温泉あるからさ。」
「地下にプールもあるみたいよ。凪沙あとで泳ぎに行ったら?」
「うーん……。」
意気揚々とホテルに入って行く大人二人に対して、
凪沙と衛輔はテンションが上がらない。
「衛輔の学校、テスト終わった?」
「いや、まだ……ていうかもうすぐ。」
「うちも。部屋で勉強しよっかな。」
そう言って凪沙は持ってきたスクール鞄を持ち直した。
「凪沙って勉強できんの?」
「普通だよ。しかも、必死に勉強しての普通だからね。
手を抜いたら簡単に赤点。」
凪沙は肩をすくめた。
「まあ、凪沙の学校はうちよりレベル高そうだもんなー。」
「私立と公立で比べるのもどうなの。」
二人はゆっくりと親たちの後を歩いた。
「まあ、せっかくだし、おいしいもの食べて風呂入って満喫しようぜ。」
「あ、屋上に庭園の足湯があるらしいよ。そこ行きたい。」
先日の電話の時よりも元気な様子の凪沙に、衛輔はほっとする。
「じゃああとで行こうぜ。」