第6章 ひらいて
「だから、できるだけ早く家族になりたいんだよ。
広子さんに安心して手術を受けてもらうためにも。
凪沙ちゃんのこれからのためにも。
もちろん、俺は衛輔の父親だから、お前が一番大事だけど、
できれば、一緒に守ってくれないか。あの二人を。」
「守るって……。」
一体どうしたら?少し混乱した頭で衛輔は考える。
(ママにやってもらったの)
初めて会った日にそう言って綺麗に上げた髪を見せて嬉しそうにしていた凪沙の姿を思い出す。
(仲良いんだよな、広子さんと凪沙……。)
「早く手術を受ければ、広子さんは長く生きられるってこと?」
「早ければ早いほどいい。」
父がそう力強く頷くのを見て、衛輔はカップを持っていた手に力を込めた。
「親父は広子さん説得して。俺も、凪沙と話してみるから。」
「頼もしいな。衛輔、ありがとう。」
父はそう言って頭を下げた。
「親父はさ、いいのかよ。2回も嫁さんに先立たれるかもしれないんだろ。」
衛輔の言葉に、父は静かに答える。
「そんなことは、大したことじゃないんだよ。
って言っても、衛輔にはまだ分からないかな。」
「いや、なんとなく分かる気がするよ。」
父の表情を見て、衛輔はそう言った。
「大人になったなあ。衛輔。」