第6章 ひらいて
「凪沙がようやく再婚に前向きになったからって急いでるんだろ。
また反対されたらと思って焦ってるんだろ。
全部大人二人の都合じゃねえか。ふざけんなよ。」
少し声を荒げる衛輔に、父はあくまで落ち着いた表情を崩さない。
「親父はさ、凪沙の父親の話って聞いてんの?」
「……軽くはね。広子さんもそのことはあまり話したがらないから。
でも、衛輔がそんなことまで知っていたってことには驚いたな。」
静かにつぶやいて、コーヒーを一口飲んだ。
「だったらさ、あいつがどうして不安なのかとか、分かるだろ。」
「それは少しずつ解決していくさ。」
「順番が逆だろ。解決してから進むべきだ。別に急ぐ理由もあるまいし。」
「急ぐ理由があると言ったら?」
父は相変わらず静かに、しかしさっきよりもはっきりとした口調でそう言った。
「は?」
「あるんだよ。急ぐ理由が。」
「……なんだよ。それ。」
父の少し緊張した表情を見て、衛輔はドキリとする。