第6章 ひらいて
電話を切って、衛輔がリビングへ行くと父は本を読みながらコーヒーを飲んでいた。
「親父、あのさ……。」
「ん、どうした?」
顔を上げて衛輔の方を向く。
「再婚、やっぱりちょっと急じゃねえ?
反対してるわけじゃないけど、
もっとゆっくり落ち着いてからでもいいんじゃないかって。」
なるべく穏やかな口調で衛輔は話し出した。
父は何も言わずに、立ち上がってキッチンへ向かう。
「再婚したらこの家に住むんだろ?凪沙は学校遠くなるし、あいついろいろ心配してるんだよ。」
コーヒーメーカーからカップに注いで、衛輔に差し出す。
座るように促されて、衛輔は大人しく従う。二人は向かい合って座った。
「春休みに引っ越しも済ませれば落ち着いて新学期を迎えられると思っているんだけどな。
衛輔も受験生になるし、入試近くなってからにバタバタしたくないだろう。」
「だったら受験が終わってからだって……。」
「そうしたら今度は凪沙ちゃんが受験生だ。」
「……勝手なこと言うなよ。」
一方的な物言いに、衛輔は苛立つ。