第6章 ひらいて
それからはトントン拍子にことが進んだ。
月に何度か4人で出かけたり、食事をしたり。
このまま再婚するだろうことは誰も疑わなかった。問題は、タイミングだけとなった。
2月の終わりに、大人二人の休みが取れて旅行が決まった時、
凪沙は楽しみな反面、不安も抱いていた。
夜10時、凪沙は衛輔に電話を掛けた。
「もしもし、衛輔いま平気?」
「おう、どうした。」
「旅行の話、聞いた?」
「ああ、さっき聞いた。1泊で温泉だってな。」
「うん。部活休んで大丈夫?」
「午前中だけ出てから行く。試合前でもないし、今は比較的落ち着いてるから。」
「そっか。」
凪沙は少しだけ開いたカーテンを直しながら相槌を打つ。
「なんか元気ねえな」
衛輔に指摘されて、凪沙は小さな声で、そうかな。と返事をした。
「あのさ、衛輔は聞いてる?具体的な再婚の時期とか……。」
「ああ、春までには?みたいなことは聞いてるけど。」
「だよね……。」
「なに、どうかした?」
「私、衛輔のこともおじさんのことも良い人だと思うし、
もう前みたいに再婚反対ってわけじゃないんだけど。それでもやっぱり……。」
「ああ、うん。分かるよ。ちょっと急だよな。」
凪沙の言わんとしていることを読み取って、衛輔は答える。
「ママは、一緒に住んでいくうちに慣れるから大丈夫って言ってるけど。
それってちょっと違うような気もするというか……。」
「だよなあ。」
「急いでるみたいで、なんかちょっと嫌だなって。」
凪沙の不安は、衛輔にもよくわかった。
「俺も親父と話してみるよ。
春までっていうことになんか事情があるかもしれないし。」
「うん。ありがとう。」
「一応兄さんになるわけだしな。」
そう冗談ぽく言うと、凪沙はそうだねと答えて笑った。