第5章 ゼラニウム
「お待たせ。」
約束の時間ぴったりに衛輔はやってきた。
昨日と同じジャージ姿を見て、凪沙は口を開いた。
「昨日も思ったけど、衛輔って赤似合うよね。」
「よく言われる!」
自信たっぷりで歯を見せて笑う衛輔に凪沙は少し呆れる。
「ちょっとは謙遜しなさいよ。」
軽口を言い合える程度には打ち解けて、衛輔は嬉しく思う。
「んじゃ、行こうか。」
並んで歩き始めた。
「ここから近いの?」
「3駅かな。通学するのにここで乗り換えてる。」
「ふーん。」
電車に乗り込む。
隣に立つ衛輔を見上げて、凪沙はふと思いついたことを聞いてみる。
「衛輔ってさ、身長いくつ?」
「165センチ。なんだよ文句あんのか。お前よりはでけえだろ。」
衛輔は不機嫌な口調を隠しもせずに答える。
「いや別に怒ることないじゃん。
バレーって大きい人ばっかりのイメージだったから。実際はそんなことないのかな?」
「まあ、正直大きいに越したことはないんだけどさ。
うちは特別大きい奴ってほとんどいないな。でもチームとしては強い。
高さだけじゃないからさ、バレーは。おもしろいよ。」
楽しそうに話す彼の様子に、凪沙も自然に笑顔になる。
「凪沙は?部活やってんの。」
「水泳部。」
「へー。泳ぐの得意なの?」
「普通だよ。うちの学校温水プール完備で環境いいし。
ダイエット目的で水泳部はいる子多いから。そんなガチじゃないよ。」
「さすがお嬢様学校。」
「まあね。」
「ちょっとは謙遜しなさいよ。」
さっきの凪沙の口調をまねて衛輔が指摘すると、彼女は笑った。