第4章 雪の日のこと(後編)
「うわ、すげえ大雪だなー。吹雪か。」
「道の端の方は積もってきてるね。」
ベランダに出て、二人はマンションの3階からの景色を見渡す。
「はあ……雪の日って静か。」
「ほんとだな。」
「明日は電車動くといいね。」
「さすがに動いてもらわないと困るなー。部活行けねえもん。」
衛輔は次々に雪が落ちてくる真っ暗な空を仰いだ。
「花びらみたい……。」
「だなあ。あ、頭に積もってんぞ。」
凪沙の髪にふわふわと雪が重なって行く。
「衛輔もだからね。」
二人は顔を見合わせて笑う。白い息がふわりと舞って、暗闇に溶けていく。
凪沙の髪に柔らかく乗ったそれをみて、衛輔は一つの記憶がよみがえる。
「あの日も、こんな風に白い花つけてたよな。」
「……そうだっけ。」
「俺、あのとき何か怒らすようなこと言った?ずっと気になってたんだよね。」
衛輔は凪沙の顔をじっと見つめた。
(言葉も、視線も、なんてまっすぐな人。)
ベランダの手すりにうっすらと積もった雪を触りながら、凪沙は口を開いた。
「肌が白いって言われるの、あんまり好きじゃないから……。」
意外な返事に、衛輔は首をかしげる。