第4章 雪の日のこと(後編)
「ねえ……。」
凪沙はそのそばに近づいてきて話しかける。
(お、警戒心なくなってきたかんじ?)
その距離に衛輔はこっそりと笑みがこぼれる。
「なんだよ。」
「おじさんってさ、夜遅い日、ある?」
「親父?あー、一応勤務医だからなあ。
夜おそいこともあるし、泊まりでいないこともあるよ。」
凪沙はふーんと相槌を打つ。
「そういう時、衛輔は何してる?
ごはんとかテレビとか、全部一人でして、一人で寝るでしょ?何考えてる?」
凪沙の質問に、衛輔は少し考えてから口を開く。
「うーん、部活から帰ると疲れてるからなあ。
とにかく早く食べて早く寝たい!って思ってるかも。」
そう言って笑った。
「そうなんだ……。」
「凪沙は一人で家にいるとき何してんの?」
「別に何も。宿題やったり、スマホいじったりしてるかな。」
衛輔には、そう言う彼女の表情が少し寂しそうに見えた。
腹筋の力だけで上半身を起こす。
「雪、積もってるかな。」
「あ、ベランダ出てみる?」
凪沙は立ち上がってベランダに続く窓へと案内する。