第4章 雪の日のこと(後編)
「ねえ、ごはんどうする?」
風呂から戻ってきた凪沙は濡れた髪を拭きながらそう聞いた。
「あ?そうだなあ。この雪だから外出たくねえな。」
「スープならある。昨日のだけど。ごはん炊いたら食べる?」
「食う食う。おかずは?肉とか。」
「衛輔って図々しいよね。」
「いいじゃん。俺腹減った。」
凪沙は冷蔵庫を開けて物色する。
「野菜炒めくらいなら……肉も入れるから!」
野菜炒めと聞いて明らかにテンションの下がった衛輔に、凪沙は冷凍庫から豚肉を出して見せた。
「やった。俺何か手伝う?」
「じゃあお米といで。私髪乾かしてくる。」
「了解。」
凪沙は炊飯器から釜を出して、米びつからすくって移した。
ジャージの袖をまくって、衛輔はそれを受け取る。
「あ。」
「え、なに?」
「シャンプーいい匂いだなって。」
衛輔がそう言って生乾きの凪沙の髪に顔を近づける。
「そういうのやめて。チャラい。」
少し頬を赤くして、口をとがらす。
「えー、これもだめなのかよ。難しいな。
でもほんと良い匂い。マツキヨで安売りしてるのとは違うカンジ。」
「よくわかんないけど、ママがいつも持って帰ってくる。」
「あー、なるほど。さすがだなー。」
凪沙は、少し自慢げにまあね、と返事をしてリビングを出て行った。
廊下の向こうでドライヤーを使う音がした。
衛輔は蛇口から水を出して米をとぎ始める。