第13章 ずっと一緒
足音が保健室の前で止んで、ガラガラと扉の開く音がする。
「凪沙ちゃん?いるー?」
聞き覚えのある、クラスの女子の声だった。
(どうしよう……)
凪沙がちらりと衛輔を見上げると、目があった彼はしっ、と人差し指を立てて口元に当てている。
カーテンの向こうで、人の動く気配がする。
すぐそばまで人影が近づいてきて、二人は息を殺す。
「きっと病院に行ったんだよ。やけどだけじゃなくて食器の破片でどこか切ってたかもしれないし。」
この声は、間違いなく孤爪だ。
ベッドに身を隠す二人はドキリとする。
「そっか……。」
「うん。諦めて戻ろう。」
孤爪に促されて、女子は保健室を出て行った。
二人分の足音が遠ざかってから、ふう、と息を吐いて、凪沙と衛輔は顔を見合わせる。
「研磨だったね。」
「ああ。」
「ふふ……。」
「なに笑ってんだよ。」
「だって、すっごいドキドキした……何にも悪いことしてないのに、見つかったらどうしようって……あはは。」
声を抑えて笑う凪沙につられて、衛輔も笑いがこみあげてくる。
「まったく、誰のせいだと思ってんだよ。」
くくっと肩を震わせて笑う彼に、凪沙はほっとする。
「よかった。機嫌なおって。」
「は?」
「だって、衛輔ずっと怒ってた。」
「別に怒ってないけど。」
「うそ。」
「うそじゃねえし。」
「えー、怒ってたじゃん。」
薄暗いベッドの上に座って、二人で小さく言い争っていると、外から後夜祭の始まりを告げる音楽が聞こえてきた。
「始まっちゃった……。」
「怪我してんだから諦めろ。お前はまた来年あるんだし。」
「……でも衛輔は、今年で最後だよ。」
凪沙は寂しそうにつぶやいた。
「最後の後夜祭、かわいい女子に告られたりするかもしれないじゃん。行かなくていいの?」
衛輔モテるんだし。と付け足して、カーテンを少し開ける。
窓から後夜祭の様子がチラチラと見える。
数秒それを眺めてから、衛輔は決心したように口を開いた。
「お前のこと置いて行くわけにいかないし。それに俺、彼女作るつもりねえよ。」
凪沙ははっとして彼を見上げる。