第13章 ずっと一緒
「ナギ、その格好寒くないの。」
「うん。ちょっと寒い。」
二の腕を摩りながら、凪沙が鼻をすする。
「上着きなよ。」
「更衣室に荷物全部置いてきちゃった。あとで取ってくる。」
すると孤爪は、傍に置いてあった自分の荷物から真っ赤な部ジャージを出して彼女に寄越した。
「なくさないでよね。」
「いいの?ありがと。」
遠慮なくそれに腕を通すと、少しだけ裾が余った。
「黒尾さんたち、みんな大きいから気付かないけど、研磨も普通に身長あるよね。」
くるくるとまくる袖をちらりと見て、
「そりゃ、ナギよりはね。」
そっけなく答えて、再び茶葉と向き合った。
「それ……その格好、さ……。」
「ん?これ?」
「うん。それ、夜久さんは、知ってるの……?」
作業する手を休めずに、孤爪はぼそぼそと聞いた。
「ううん。今日初めて着たもん。まだ衛輔は見てないよ。」
「そっか……。」
「なに、どうかしたの?」
「なんでもない。」
無表情ながら、少しご機嫌なのが雰囲気で伝わってくる。
凪沙はその意味が分からずに、首をかしげていたら
「凪沙ちゃん、こんなとこにいたー!はやくこっちきてー。髪の毛するから!」
背後から、先ほどの実行委員の子に呼ばれて、凪沙はびくりと振り返った。
「あ、私行かなきゃ……。研磨、これ、後でかえすね。」
そう告げて、彼女は走って行ってしまった。
「うん……。」
孤爪は小さく返事をして、彼女の後ろ姿を見送った。