第12章 敗北のあと
その時、凪沙の電話の着信音が響いた。
「芝山だ。……もしもし?」
スマホの画面をタップして通話にする。
ひどく慌てた芝山の声が凪沙の耳に入る。
『凪沙さん!?あの、すいません、海さんにもかけたけど出なくて、俺、研磨さんの番号知らないし、それで……』
「え、どうしたの?落ち着いて。」
傍にいた3人も何事かと凪沙に近寄る。
『今、部室で、黒尾さんと夜久さんがすごいケンカしてます。犬岡くんが止めようとしてるけど無理そうで……。』
「わかったすぐ行く。」
芝山の泣きそうな声から、事態の緊急度は十分伝わった。
「部室いこう。」
凪沙は孤爪の手を取る。黒尾を鎮めるにためには彼の力が必要だろう。
「え、俺も?」
「いいから。山本と福永も来て。」
本日二度目のその言葉に、孤爪はため息を何とかこらえて足を動かした。