第12章 敗北のあと
2年生4人で集まって話がしたいと言い出したのは山本だった。
その内容は……
「研磨は、黒尾さんから何か聞いてないのか。」
「え、特になにも……。」
いつも通りの感情のない声音で、孤爪は俯く。
予想通りの返事に、山本は頭を掻いた。
「春高目指すなら、3年がいなきゃ無理だろ。」
そんなことは山本以外の3人も承知している。
しかし、それはどうしようもないことでもある。
だから、少しでも早く3年の意思を確かめたいということだった。
しばしの沈黙を破ったのは、凪沙だった。
「衛輔は……たぶん、やめるつもりだと思う。」
3人の視線が彼女に集まる。
「そう言ってたのか、夜久さんが?」
「はっきりと言われたわけじゃないけど、なんとなく……そんな気がする。」
昨夜の衛輔のことを思い出しながら、凪沙は歯切れ悪く答えた。
「まじかよ……。」
山本は言葉を失う。
「仕方ないよ。本人が決めることだし。」
「研磨は冷てえな……。」
「別に、ホントのことだから。」
孤爪と山本のちいさな言い合いを遮ったのは、それまで黙っていた福永だった。
「それはそうとさ、研磨と凪沙はどうなの。」
普段滅多に会話をしない福永の声に、全員がびっくりする。
「え、なに?私と研磨?」
突然話の方向が変わったとこも相まって、戸惑いながら凪沙が聞き返す。
「そう。仮に黒尾さんと夜久さんが引退することになったら、二人は部活やめちゃうのかなって。」
階段に座ったまま、福永は凪沙と孤爪を交互に見上げた。
孤爪は黒尾に、凪沙は衛輔に影響されて部活を続けているように見えた福永はずっと気になっていたのだ。
「うそ……研磨、やめちゃうの?」
凪沙は自分のことよりも驚いて、孤爪の顔を見入る。
「え、やめないつもりだけど。……ナギこそ、どうなの。」
孤爪のその言葉に、みんながほっと胸をなでおろす。
今度は凪沙が注目を浴びる。
「私もやめないよ。バレー部に入ったきっかけは衛輔がいたからだけど、今は部活が好きだし、
試合負けたのも悔しかったし。ちゃんと続けるよ。当然でしょ。」
胸をはって言い切った。
全員が顔を見合わせて、誰からともなく笑顔がこぼれる。