第11章 再会
「……凪沙のことを思うなら、あなたは凪沙に恨まれたままでいてください。
それでやっぱり二度と姿を見せないでくださいって言った。」
衛輔の声は冷静だったが、その表情は少しの後悔を表していた。
「そしたらあの人は、分かった。って。もう二度と来ないし連絡もしないって約束してくれた。
そんで、これ預かった。」
衛輔はポケットから二つに折られた白い封筒を取り出した。
「手紙?」
衛輔は頷く。
「何が書いてあるかは分からない。ただのメッセージなのか、謝罪なのか、あの人の連絡先なのか……。
わからないけど、これを凪沙に渡すべきなのか、俺には分からないんだ。」
衛輔はその封筒を握り締めたまま話を続けた。
「こどもの時の話をするとさ、あいつ、はじめっから父親なんて存在していなかったように話すんだよ。
嫌いだったら嫌いなりに悪口や恨み事の一つや二つ出てきそうなもんなのに、それすらないの。
無意識に記憶の外に行っちゃってるんだろうな。
凪沙にとってあの人のことはなかったことにしたいレベルのことで、事実あいつの頭の中ではそうなりかけてる。
そんなあいつに、今更『実はお前の父親はそんなに悪い人じゃなかったぞ』なんて情報与えても混乱するだけなんじゃないかって。
……でもさ、でもそれってさ、俺のエゴなのかな。とも、思うわけよ。」
どんどん声を小さくする衛輔。