第11章 再会
「あの人のとこ行けって言われたらどうしようって思ってたから。」
思いもよらない彼女の言葉に衛輔は、はあ?と間抜けな声を出す。
「ママは病気だっていうし、やっぱり私のこと要らなくなったのかなって。
だからあの人が迎えに来たのかなとか考えてた……。」
衛輔から彼女の表情は分からないが、その声は震えていた。
(よっぽど不安だったのか……。)
数秒迷ってから、衛輔は彼女の背中に腕を回して、トントンと叩いてやる。
「そんなこと考えてたのか。」
「私ね、衛輔のこと好きだから。」
「はあ!?」
「おじさんのことも、音駒のみんなのことも大好きだから。」
「あ、あー。そういうことね。うん。」
「だから、よかった。」
一瞬勘違いをしそうになった自分が恥ずかしくて、衛輔はよかったよかった、と繰り返しながら凪沙の背中を撫でた。
「こんなことないと思うけど、もし万が一、親父が、凪沙にあの人のところへ行けって言ったとしても、
俺は絶対止めるから。そんなことさせない。
お前が行くって言っても許さないから。」
「……うん。」
凪沙は衛輔の胸の中で頷いて、細い腕で彼の背中を抱きしめた。
「ありがと。衛輔。」
耳元で、小さくささやいた。