第3章 雪の日のこと(前篇)
「おまたせー。」
衛輔がやってきてオレンジジュースを受け取る。
「ありがと。」
「どういたしまして。」
にっと笑って、衛輔は自分の飲み物に口を付ける。
「はー寒いけどつい飲んじゃうよな、コーラって。」
なんて人見知りしない人なんだろう、と凪沙は彼を眺めた。
「でさ、本題なんだけど。俺たちの親、多分再婚するじゃん?」
「どうかな。」
「凪沙は反対なの?」
いきなりの呼び捨てに凪沙はドキリとしたが、なんだか緊張してるのが自分だけだと思うと急に悔しくなった。
「衛輔は何にも考えてなさそうだよね。」
急にきっぱりとした口調で凪沙が切り返してきたので、衛輔は少し面食らった。
「え、そうかな?俺はただ、親父が再婚したいって言うならそれもいいんじゃないかって思うけど。
広子さん良い人だし。」
「ほら、やっぱり何も考えてない。
再婚ってことは家族になって一緒に住むってことなんだよ。
知らない男の人と、はい、今日から家族ですよって言われて、はいそうですかなんて、無理でしょ。」
「そうかなあ。考えすぎなんじゃね?
俺は別に凪沙が妹になるのも広子さんが母親になるのも全然抵抗ないけどな。」
(だめだ価値観が違いすぎる)
凪沙は諦めにも近い感情を覚えた。