第3章 雪の日のこと(前篇)
「で、どうしよっか。お腹すいてる?」
バスを降りて、衛輔と凪沙は駅前までやってきた。
「そんなには。この辺、ドトールか、ミスドか、マックしかないけど、どこが良い?」
「じゃあマックだな。」
「こっち。」
衛輔の返事を聞いて凪沙は歩き出す。
店に入ると、その明るさとあったかさにほっとする。
「ネコ……ま?」
凪沙が衛輔の背中をみてつぶやく。
「え?ああ、ジャージか。そう、音駒高校ってとこなの俺。
ちなみにバレー部ね。さっきバスに乗ってたやつらがそう。」
「ああ、大きくて赤い人たち目立ってたね。」
「ははは、それ言ったら絶対嫌がる奴が一人いるけど、まあそうだね。なに飲む?」
「オレンジ。」
「おっけ。じゃあ先に席取っといて。
あ、お金いいよ俺が誘ったんだしそのくらい出させて。」
「……ありがとう。じゃあ二階にいる。荷物持ってくね。」
そう言って凪沙は衛輔の荷物を持ち上げた。
「おう、ありがと。あ、一個で良いよ。こっちは重いから俺持ってく。」
凪沙は指示された小さな方の荷物だけ抱えて階段を上った。
二階の窓際の席を確保して、凪沙はマフラーを外してコートを脱ぐ。
(なんか流されちゃったけど、何を話すんだろう。
ああ、でも今日はママいないし、帰っても一人だから別にいいか。
明日は土曜で学校も休みだし。)
席に座ってぼんやりと窓を眺めたが、外はもう暗く、店内の自分が映るだけだった。
小さくため息をついて、目を逸らした。