第11章 再会
「こんなにいろんなおかずがあるのに全部おいしい……。すごいなあ。」
凪沙がぼそりと呟く。
「え、そう?ほんとに?頑張ったかいがあったわ!やっぱり女の子はいいわね。
鉄朗は味なんてなーんにも分かっちゃいないんだから。」
貶されたのは少し腹が立ったが、今は話題が逸れたから良しとしよう、と黒尾は自分を納得させた。
「ほんとおいしいです。このだし巻きすごい好きです。」
凪沙のその言葉に、黒尾の父親が再び話題に加わる。
「そうだろう。いっぱい食べなさい。」
それまで笑顔だった凪沙は先ほどと同様、表情が引きつる。
「はい……ありがとうございます。」
声と身体を小さくして声を出した。
(これは普通の人見知りとは違うよな……。)
黒尾はその様子を観察しながら考える。
(そういえば、なーちゃんって男嫌いって話だったな。
でも、バレー部のみんなや監督やコーチには、最初のときだってここまで露骨じゃなかっただろ。
このくらいの年齢が一番苦手なのかな。父親世代か……。)
そこまで考えて、昨日現れた男のことを思い出す。
「あー、なるほどね……。」
一人納得して、黒尾はから揚げにかぶりついた。
「なに、から揚げに何かついてた?」
母親が気にして反応するが、黒尾はこっちのはなし、と答えただけだった。