第11章 再会
「でも正直意外だったな。なーちゃんを俺たちに預けるのを夜久が許すと思わなかったもん。」
教室に入って、黒尾は改めて言う。
「まあこんな状況だからな。家にいても落ち着かないだろうし、少しでも安全なとこにいたほうが良いし。あと……。」
衛輔が席について脱力して机につっぷす。
「あと、なに?」
「俺が、ちょっと危ない……。」
黒尾からは彼の表情は分からないが、耳が赤いのは明らかだった。
「は、まじで。やっくんなんかしちゃったの。」
その意味をすぐに理解した黒尾が興味津々で詰め寄る。
「なんもしてねえよ。弱気なあいつって妙に素直だから、やばいなっていうだけ。」
昨日のことを思い出して、衛輔はますます頭に血が上るのを感じた。
(まさか抱きしめたくなったなんて、死んでも言えねえ。少なくとも黒尾には。)
きっと頭上の黒尾はニヤニヤ笑いをしているんだろうなと思いながら衛輔はため息をつく。
「お前、凪沙に何かしたらただじゃ済まねえからな!」
顔を上げて黒尾を睨む。
「分かってるよ。俺は人の女には興味ないから安心して。」
わざと煽る表現をする黒尾。
「誤解を招く言い方はやめろ!」
衛輔が怒鳴った時、
「おい、バレー部うるさいぞ席に着け。」
一限の教師が教室に入ってきて話題は断ち切りとなった。