第11章 再会
衛輔は彼女の手をぎゅっと握って、転ばせないように気を使いながらもなるべく早く走る。
何度か角を折れて、わざと遠回りをして家にたどり着く。
鍵を急いで開けて、玄関に逃げ込む。
内側から鍵をかけて、いつもは使わないドアガードまでしっかりかける。
「ついてこない……?」
「多分……。途中から気配なかったように思うし……。」
ぜえぜえと乱れた呼吸を繰り返しながら、二人はリビングへ入った。
衛輔は冷蔵庫からお茶を出して、二人分コップに注ぐ。
「ほら。座れ。飲め。」
言われた通りに凪沙はソファに座って、コップを受け取る。
コップが空になって、乱れた呼吸が整ってからも、二人とも黙ったままだった。
(こいつはきっと自分からは話さないだろうな……。)
そう判断した衛輔は、自分から話を切り出した。
「多分さ、あの人は、お前と話したいことがあるから来たんだろ。凪沙は、どうしたいの。」
「……私は、話すことなんて何もない。二度と会いたくない。」
小さな声だったが、意思ははっきりしているようだ。
「でもあの調子だとまた来るぞ。はっきり確認してないけどさっき追って来たのもあの人だろうし。
この家知られるの時間の問題かもな。」
衛輔はコップのお茶を飲み干した。
「そうだけど……。」
凪沙はそれっきり口を閉ざした。