第11章 再会
「駅まで一緒に帰ろうぜ。」
部活後、凪沙と衛輔が帰ろうとしたら黒尾と孤爪がやってきた。
電車通学の4人はよくこうして一緒に帰る。
「研磨、歩きながらゲームしたら危ないよ。」
凪沙が孤爪に注意する。
衛輔と黒尾は少し後ろを歩いている。
「ん。だいじょう……ぶっ!」
そう言っている傍から、曲がり角で人とぶつかってしまった。
「ほら、だから言ったじゃんー……。すみません。」
ぶつかった顔を押えている孤爪に代わって、凪沙が謝る。
「凪沙。よかった、やっと会えた……!」
相手の男性が、凪沙の顔をみてそう言った。
「……あ。」
凪沙は彼の顔をみて、固まってしまった。
鞄を持つ手が震えている。
「ナギ?どうしたの。」
不思議に思った孤爪が声をかける。
「なになに、なーちゃんの知り合い?」
黒尾と衛輔も追いついてくる。
「ち、がう……知らない……。」
凪沙は俯いて後ずさるが、明らかに様子がおかしい。
「ひどいなあ、凪沙。お父さんのこと忘れちゃったのかー?」
相手の男が明るくがそう言うと、凪沙以外の3人が一斉に彼の方を向く。
「あの、私、ちょっと寄るとこあるから。向こうから帰る。じゃあね!」
凪沙はそれだけ一息に告げると、みんなに背を向けて走り出した。
「え、おい凪沙!」
衛輔が咄嗟に彼女の腕を掴むが、全力で振り払われてしまう。
「やっくん、行っていいよ。この人の話は俺と研磨が聞いとくから。」
黒尾が早口で言うと、
「たのむ。」
衛輔は凪沙の背中を追って走り出した。