第10章 宮城遠征
「あのさ。」
凪沙が遠慮がちに口を開いた。
「なんだよ?」
「爽やかじゃなくても私の兄は衛輔なんだからね。そのことに不満なんてないよ。
あと、昨日は、ばかとか言ってごめん……。試合がんばってね。」
珍しく素直な態度に、衛輔はおお、と短く返事をする。
「なんだよ気持ちわりいな。お前が生意気なのはもう分かってるっつの。
いちいち怒ってんのもばかばかしいよ。」
試合も当然勝つし、といたずらっ子のような笑顔を見せた。
「衛輔、短気だし、私もつい言い返しちゃうから、すぐケンカしちゃうけど、
衛輔とケンカしたままなのは嫌だなって思う。」
「俺もだよ。犬岡のことだってさ、俺には関係ないのに余計なお世話だったよな。
もう何も言わないから自分で決めな。
でも、凪沙って女子校出身なだけあって世間知らずなとこあるからなー。」
あんまり心配させないでくれよ、と衛輔は凪沙の髪をくしゃくしゃと撫でた。
「もう、子ども扱いしないでよ。早く行こう。みんな待ってる。」
凪沙は足を速めた。