第10章 宮城遠征
(うわ、優しい……。初対面の男の人なのに怖くないや。)
凪沙が感心しながら当然のように手伝ってくれる三人と一緒に荷物を拾っていると
「おーい、三人とも、そろそろミーティングはじまるぞ。」
東峰がやってきて声をかけた。
「おう、すぐ行く!ていうかちょうどよかった、旭もこれ手伝って。」
菅原がそう返事をすれば東峰も一緒になって荷物を拾い集める。
「こら凪沙!モタモタすんな。ていうかどうかした?」
凪沙を探しに来た衛輔がやってきて、烏野メンバーにも軽く会釈をする。
「あ、さっきはホントすみません。山本のことは責任もって見張っときますんで。」
衛輔が菅原に向かってペコリと頭を下げる。
「いやいや、こちらこそ。ていうか今もうちのがちょっと迷惑かけたみたいで。」
衛輔と凪沙に爽やかな笑顔を向けてから、田中と西谷の方を向く。
「俺は、ただその子が荷物運ぶの大変そうだったから、手伝ってあげようとしただけですって!」
「その子は完全に怯えてたけどな。」
追い打ちをかける菅原と、何も言い返せない田中西谷。
「凪沙、お前また初対面の男にキツく当たったんじゃないだろうな。」
衛輔が凪沙に向かって注意する。
「そんなことは……ないよ。たぶん少ししか。だって田舎ヤンキーかと思った……。」
どんどん小さくなる凪沙の声を聞いて、衛輔はぎょっとする。
「お前、失礼なこと言うなよな!ほんとすんません!」
東峰に向かって謝罪する衛輔。
完全に心が折れたらしい東峰は、何も言葉が出てこない。
「ぶはっ!田舎ヤンキーって!確かになー。
でもそれ聞いて真っ先に旭のことだと思っちゃった夜久くんもなかなかだよね。」
菅原が声を上げて笑うと、衛輔はもはや笑ってごまかすしかなかった。
「衛輔だって失礼じゃん……。」
凪沙が衛輔の背後に隠れてぼそりと呟く。
「お、ま、え、は!黙ってろ!」
恥ずかしさを隠すように彼女の両頬を片手でぎゅっとつまんだ。