第10章 宮城遠征
翌日、烏野と初顔合わせを済ませ、試合の準備をしていた時のこと。
「お嬢さん、重そうだね、手伝いますよ?」
凪沙が大荷物を抱えて歩いていたら、聞きなれない声がかけられた。
声の主を見上げて烏野のジャージを着た二人を凪沙は警戒する。
(でかい坊主と、小さな……ヤンキーかな。絡まれる?)
よたよたと数歩後ずさって、
「あの、へいき、です……。」
「え、でもそんなに持ってたら前見えないし危ないだろ?任せろって!」
西谷が凪沙との距離を縮めてくる。
「体育館に運ぶんだろ?俺たちも今から行くから。
男子たる者、常に女性には親切でなければいけませんから。
特にあなたのような美少女には。」
田中が決め顔を披露して、小柄な彼女に向かって腕を伸ばす。
「あ、いや。ほんとに大丈夫……。」
困り顔で凪沙はさらに後ずさる。
「こら!田中西谷、女の子囲って絡んでんじゃないよ!」
二人の背後から菅原が現れて彼らの襟首をつかむ。
「ち、ちがいますよスガさん。俺は手伝ってあげようと思って。」
「そうですよ。決して音駒のマネさんが美人だからお近づきになりたいとかそういう訳では……。」
苦し紛れの言い訳をする田中と西谷。
凪沙は言い合いをする3人を見比べていたが
「ごめんねー。怖がらせちゃったよね。大丈夫?」
菅原に爽やかな笑顔を向けられて、少し緊張がほぐれる。
「あ、はい。大丈夫です……。」
こくこくと頷くと、抱えていた荷物がバランスを崩して地面に散らばる。
「ありゃ、大変だ。足に落ちてない?平気?」
真っ先に凪沙のことを心配して、散乱した荷物に手を伸ばす菅原。