第10章 宮城遠征
「じゃあ大丈夫だよ。やっくんも、なーちゃんのこと相当好きだからさ。
これでもやっくんとの付き合いはなーちゃんよりも長いから。あいつああ見えて人の好き嫌いはっきりしてんのよ。
で、なーちゃんがモヤモヤしてることの答えというか、ヒントなんだけど……。」
「?」
黒尾は意味深げにニヤリと目を細めてから、口を開く。
「犬岡に気を付けろ、ってやっくんは言ってたんだよね?」
「はい。」
「それ、そのままの意味で俺から言わせてもらうと“衛輔には気を付けろ”ってことかな。」
凪沙がはっとして黒尾の目を見つめる。何か言おうとして口を開きかけたとき、
「さて、そろそろ寝るぞー」
と黒尾は立ち上がって凪沙の頭を軽くたたいた。
「黒尾さんって、本気と冗談の判断がしにくいです。最後のは冗談ですよね。」
「あれ。冗談に聞こえた?どうかなー。あんまり俺がしゃべると夜久に怒られちゃうからね。
今日はここまでってことで。」
この話はおしまい、と黒尾は言い切ってから歩き出した。
(いやいや、まかね……。)
凪沙はさきほどの黒尾の言葉を頭の中から追い出そうと首を振った。