第3章 雪の日のこと(前篇)
「どうした?」
黒尾が何事かと驚いて聞く。
「女子高生が……いっぱい……。」
「ああそうかよ。」
確かにバスの中には制服をきた女子生徒がたくさん乗っていた。
近くに女子校でもあるのだろう。
「なんか、心なしか良い匂いがする気が……。」
「トラほんと黙って恥ずかしい。」
孤爪が眉をひそめる。
その時、女子高生の群の中に衛輔は見覚えのある顔を見つけた。
「あ。」
バスの中ほどに立って窓の外を眺めているのは、先日一度だけ顔を合わせた凪沙だ。
髪型も服装も違うので一瞬分からなかったが、
あの白さと小ささは紛れもなく彼女だ。
「今度は夜久かよ、いちいち女子高生に反応すんな。」
「ちげえよ!山本といっしょにすんなっつの。
ちょっと知り合い。お前らここにいろ。」
衛輔はそう言い残して凪沙に近づいた。