第3章 雪の日のこと(前篇)
「さっみーな……。」
その寒さにポケットに手を突っ込む衛輔。
「だからこんな日に練習試合なんてやめようって言ったじゃん。」
ゲーム機に視線を落としたまま歩く孤爪に、
黒尾が「危ないからやめろ」と注意しながらなだめる。
「そう言うなって。三年が引退してようやく楽しくバレーできるようになったんだから。」
「試合も久しぶりだったしな!負けたけど!!
生川高校さすがに強いよなー。」
山本はそう言って悔しそうな表情を浮かべる。
「まあな。俺たちはまだこのメンバーになって日も浅い。
経験不足だし、練習あるのみだな。
しっかし寒いな!雪降るんじゃねーの?」
黒尾がそう言って空を仰ぐ。
衛輔が道の向こうからやってくるバスを見つけて叫ぶ。
「あ、バス来たぞ。急げ。あれ逃したら1時間後だぞ!!」
「マジかよ神奈川ってそんな田舎だっけか。」
「ここは特にだね。ほら研磨も急いで急いで。」
海がマイペースな研磨を急かす。
やってきたバスに、メンバーはぞろぞろと乗り込む。
「お、おおおおお……。」
バスに乗るなり、山本が唸り声を上げる。