第10章 宮城遠征
「……スポドリの粉、電池、靴下。全部あるね。」
「おっけーっす!」
凪沙と犬岡は買い物かごの中身を一緒に確認して、レジに向かった。
「ありがとー、犬岡が一緒に来てくれて助かった。」
「いえいえ。俺も凪沙さんと来れて楽しかったです。」
会計を済ませて、店を出る。
重い荷物は犬岡が持ち、凪沙は軽いものだけ渡される。
「じゃあ、早く戻りましょう。みんな待ってます。」
「うん、そだね。」
夜道を並んで歩き出すと、会話はバレーのことになる。
「犬岡は1年なのにレギュラーですごいね。練習もがんばってるし。」
「でも俺、もっともっと上手くなりたいっす。黒尾さんみたいにレシーブもブロックもこなせるようになりたいっす。」
目を輝かせてそう宣言する彼に、凪沙は自然に笑顔になる。
「うん。がんばれ。犬岡はほんとにいい子だね。私、女子校育ちで男の子って今も少し苦手だけど、犬岡は大きいのに怖くない。
バレー部で最初に話せるようになった男の子って犬岡なんだよ。」
ふわりと笑う彼女の横顔に、犬岡は満面の笑みで答える。
「そうなんですか。嬉しいっす!」
「うん。いつもマネージャーの仕事も手伝ってくれるし。ありがとう。」
凪沙が改めてお礼を言うと、犬岡は少し歩く速度を遅めた。
どうしたの?と凪沙が彼を見上げる。
「あの、こんなこと言うと夜久さんに怒られちゃうかもしれないんですけど、
俺、凪沙さんのこと好きです。」
一息に彼はそう告げた。