第10章 宮城遠征
犬岡と凪沙と入れ違いになったらしい衛輔が部屋に戻ってきた。
「あれ、凪沙みてない?」
黒尾が言いにくそうに説明する。
「なっちゃんなら、買い出しに行ったよ。」
「あ、そうなの?近くにホムセンあったもんな。誰と行ったの?」
部屋の隅のコンセントを見つけて、スマホの充電器を繋ぎながら衛輔が聞く。
「犬岡。」
その答えをきいて、衛輔は固まる。
「まじかよ。あのバカ……!」
黒尾は衛輔を落ち着かせようと、フォローをする。
「あ、でもすぐ近くだし、もうぼちぼち戻ってくるんじゃないかな。なあ研磨?」
「俺に振らないでよ。ていうか夜久さんちょっと落ち着きなよ。」
孤爪にも心配されて、衛輔は無意識のうちにしていた貧乏ゆすりを止めた。
(そもそも俺はどうしてこんなに凪沙のことを気にしなきゃいけないんだ。)
自分でも理由のわからない苛立ちを、その場にいない犬岡にぶつけた。
(犬岡、なにかやらかしたら許さねえ……。)