第10章 宮城遠征
宮城遠征3日目の夜
対烏野の試合を翌日に控え、みんなはリラックスして各々休んでいた。
その中で山本が神妙な面持ちで話し始めた。
「我らの宿敵、烏野高校バレー部に女子マネージャーはいるか否か。」
犬岡と芝山は顔を見合わせてきょとんとする。
「いたらいいんじゃないですか。凪沙さんもマネ仲間がいたほうが楽しいだろうし。」
「それに猛虎さんはどうせ緊張してしゃべれないじゃないですか。」
それぞれに思ったことを正直に口にする。
「そんなことは問題じゃない。もしいると仮定した場合……うちの凪沙嬢より美人だったら悔しいだろうが!?」
拳を突き上げて山本は熱弁した。
(山本がまた頭悪いこと言い始めたな……。)
傍にいた黒尾は、会話に入ることこそしないが、その場に凪沙と衛輔がいないことを確認してほっとする。
(夜久はナギのことになると輪をかけて短気になるからなあ。)
明日の着替えを整理しながら黒尾は苦笑いする。
「えー、凪沙さんよりキレイな人なんて俺想像できないっす。」
犬岡がうーんと首をひねる。
「甘いぞ犬岡。凪沙は確かに美少女だ。だが、彼女に足りないものも確かにある。なんだか分かるか。」
山本がしたり顔で問いかけると、
「色気ですかね。」
芝山がいつものかわいい顔でにこやかに答えると、場の空気が凍った。
彼らの会話を聴いていた黒尾は思わず吹き出して、近くでゲームをしている孤爪に話しかける。
「なあ研磨、俺、たまに芝山が怖いと思う時があるんだけど……。」
「クロ知らなかったの?芝山は前からあんなかんじだよ。」
孤爪はゲームに視線を落としたまま返事をする。