第10章 宮城遠征
それを廊下で聞きつけた衛輔はすぐさま駆けつける。
「おい!なにしてやがる!!」
衛輔に殴られて、黒尾は漸く目を覚ました。
「……痛いよ、やっくん。もうちょっと優しく起こして。」
黒尾がむにゃむにゃと寝ぼけた顔で起き上がると、凪沙は素早く衛輔の元へ逃げ込んだ。
「だから言ったろうが。もうちょっと用心しろって。」
コツンと拳で軽く頭を叩くかれる。
「い、今のはちょっと油断しただけだし……。」
言い訳をしながら、黒尾に抱きしめられた際に少し乱れた服を直す。
「あれ、なーちゃんおはよ。どったの顔赤いよ。」
何も分かっていない黒尾が呑気に口を滑らせたので、衛輔にもう一発殴られることとなった。
「ほら、研磨も起きて!」
痛がる黒尾を他所に、凪沙は未だ眠りの中にいる孤爪を起こした。
「うー……ナギうるさい。」
「何言ってんの、早く準備して!」
凪沙に腕をひっぱられて無理矢理起こされる孤爪。
「黒尾も二度寝すんな!」
凪沙と衛輔の二人がかりで寝起きの悪い孤爪と黒尾を何とか立ち上がらせてみんなのところへ向かわせる。
「まったく、手のかかる奴らだ。」
やれやれ、とため息交じりの衛輔に、凪沙は声をかける。
「衛輔……助けてくれてありがとう。」
「おう、黒尾には当分近づくな。ちょっと反省させるから。」
腕を組んで衛輔は眉間にしわを寄せた。