第10章 宮城遠征
「黒尾さーん、ごはんの時間ですよ。起きてください。」
凪沙が声をかけるが、うつぶせで両耳をしっかりと枕で抑えている寝姿勢のため、聞こえているかは甚だ怪しい。
(なんつー寝相……。)
隣りで寝る孤爪も一向に目を開ける気配はない。
凪沙は仕方なく、黒尾の腕を掴んで耳元に隙間を空ける。そこに向かってもう一度声を出す。
「黒尾さん!起きてください!!」
「んー……」
ようやく凪沙の声が届いたのか、黒尾は寝返りを打つ。
「ほら、もうみんな起きてますよ!黒尾さ……」
「うるせーちょっとだまれ」
もうひと押し、と凪沙が再度起こしにかかると、黒尾は彼女の腕をぐいっと引っ張った。
「きゃ……っ」
抵抗する間もなく、抱き枕のように凪沙は黒尾の腕に抱かれてしまった。
「なにしてんですか離してください!ていうか重い。
苦しい!……助けて!も、衛輔えええええ!!」
じたばたと暴れても安らかな寝息を立てている黒尾を見て、凪沙はついに悲鳴をあげた。