第3章 雪の日のこと(前篇)
凪沙の母は美容師だ。家の近くにお店を構えていて、なかなか繁盛している。
それとは別に、美容師仲間の伝手でウエディングのヘアメイクの仕事も行っている。
特に春や秋、今のようなクリスマスシーズンは忙しく、出張も多い。
凪沙が小3の時に離婚したのちも、何一つ不自由なく生活し、
中学から私立の女子校に通えているのもすべては母のおかげだ。
「手に職って大事よねー」
とへらへらしながら話しているが、きっとそれなりに苦労も大きかっただろうと凪沙は最近思うようになってきた。
だから、再婚したいと言い始めた時には、戸惑った。
母の幸せを願うなら、賛成するべきだということも分かったし、
相手の男性もその息子の衛輔もいい人だと思う
でも、凪沙はどうしても再婚には前向きになれないでいた。