第10章 宮城遠征
「お前さ、黒尾みたいな分かりやすいタイプには警戒するけど、他もみんな男なんだからな。
さっきだって研磨と寄り添って寝ちゃってさ、無防備にもほどがあるだろ。」
「なに怒ってんの。そんなこと言ったら衛輔だって男じゃん。
じゃあ私は衛輔にも警戒しなきゃいけないの。」
口答えされたことに衛輔はカチンとくる。
「俺はいいんだよ、兄妹なんだから!」
「だからって、あれはダメ、ここれもダメって命令する資格なんてないでしょ。」
少しずつお互いの怒りが上がって行くのが分かる。
「別にダメだなんて言ってねえだろ、犬岡には気を付けろって言っただけだ。
それともなんだ?お前犬岡のこと好きなのか!?」
鼻息荒くまくし立てると、凪沙は完全にキレた。
「なんでそうなんの、衛輔のばか!」
もう話してもまともな会話にもならない、と判断して凪沙は一人早足で合宿所に向かって歩き出した。
(あー……くそっ。怒らせてどうすんだ俺!)
衛輔は苛立ちで頭をガシガシと掻いた。
遠くなっていく凪沙の背中を見つめる。
「心配してやってんのに……何かあっても知らねえぞ。ばか。」