第10章 宮城遠征
衛輔が暗闇の中で目を覚ますと、隣の布団にいる凪沙が寝返りを打つ気配がした。
「凪沙……起きてるのか?」
小さな声でそう呼びかけると、彼女は小さく返事をした。
「ん……。ごめん。起こした?」
「いや、大丈夫だけど。寝れないのか?」
申し訳なさそうに凪沙は起き上がった。
「ちょっと外の空気吸ってくる。」
「一人じゃ危ないだろ。一緒に行くよ。」
「平気。衛輔は寝ててよ。試合疲れたでしょ。」
「いやいや、だめだって。」
そそくさと部屋から出て行こうとする凪沙のあとを衛輔は上着を持って追いかけた。
「ついてこなくていいって。」
「妹が夜ふらふら出歩くのを見過ごすわけにはいかないからな。」
そう言われれば何も言い返せない。
「夜はさすがに寒いね……さすが東北。」
凪沙は外に出て腕をさする。
「だよなー。ほら、これ着とけ。」
衛輔は持ってきた上着を凪沙の肩にかけてやる。ありがと、と小さくお礼を言ってから、凪沙はゆっくりと歩き出した。
「どこ行くんだよ。」
「ちょっと散歩するだけ。」
衛輔は仕方ないな、と彼女の後を追った。