第10章 宮城遠征
「あ……。」
「え、どしたの。いた?」
階段を下りて、1階に差し掛かったところで衛輔が驚きの声をだす。黒尾がその視線の先に目を向けると、
「わお。これはこれは……。」
黒尾も言葉にならないと言った表情を見せる。
ベンチに座った凪沙と孤爪が寄り添って眠っていたのだ。
「うわあ、なにこれ二人ともかわいい。」
黒尾が声を潜めて二人に駆け寄る。
「凪沙はともかく、なに研磨にまでトキめいてんだよ。キモい。」
衛輔が冷ややかな視線を向ける。
「普段警戒心が強い二人のこんな姿みたらそりゃあねえ……。どうする、写真でもとっとく?」
スヤスヤと寝息を立てる二人に携帯を向ける黒尾を無視して、衛輔は凪沙の肩を叩いた。
「こら、こんなとこで寝るな。」
「んー……。衛輔?」
むにゃむにゃと言いながら凪沙は目を開けた。
「ほら研磨も起きろ。黒尾に写真撮られるぞ。」
孤爪も続けて起こされる。
「まったく、いつまでも戻ってこないと思えば、何してんだお前ら。」
「だって部屋で衛輔たちがエッチな話してるから入れなかったんだもん……。」
まだ寝ぼけている凪沙に指摘されて、衛輔は焦って顔を赤くする。
「お、お前、あれ聞いてたのか!?」
「あー、夜久のち○こがおっき……」
「もうその話はいいんだよ!」
衛輔に脇腹を殴られて黒尾はその場に膝をついた。
「やっくん、手加減……明日の試合に響くから。」
「黒尾はもう少し口を慎め。ていうか研磨はおきろ!」
衛輔の声が廊下に響いた。