第10章 宮城遠征
「あれ、そういえば研磨とナギがいなくね?」
一通り騒ぎ終えて、本格的に寝る準備にかかった頃、いつまでも戻らない二人に気付いた黒尾が衛輔に声をかけた。
「ほんとだな。どこいったんだろ。俺探してくるわ。」
「俺も行く。飲み物買いたい。おい、お前らもう騒ぐんじゃねえぞ。寝てろよ。」
黒尾はそう指示をだして、衛輔に続いて部屋を出た。
「一緒に消えたのが犬岡じゃなくて良かったな。」
冗談ぽく黒尾が口を開く。
「お前なあ。人の恋愛事情にあれこれ興味示すのどうかと思うぞ。」
「またまた。やっくんだって気にしてるくせに。」
「俺は兄だからいーの。」
「でも義理のでしょ。やっくんはナギのこと……」
ニヤニヤと話す黒尾の言葉を衛輔は遮る。
「お前それ以上言ったら本気で殴るからな。」
「はいはい。」
「俺にとって凪沙は妹だよ。それは絶対だ。」
有無を言わさない鋭い口調で衛輔はそう告げると、階段を下りて行った。
(やっくんも頑固だねえ)
やれやれと肩をすくめて、黒尾は彼の後ろを歩いた。