第10章 宮城遠征
ふう、と一息ついてから、再び口を開く。
「研磨がいてよかった。最初は苦手だったけど、今は研磨といるとほっとする。
他の男の子みたいに大きな声だしたり下品なこと言ったりしないし。」
「……。」
「研磨?」
返事のないことを不思議に思って凪沙が隣に目を向けると、孤爪はゲーム機を手にしたまま眠っていた。
(疲れてるんだなあ……。)
凪沙はそっと手を伸ばして、彼の手から落ちそうになっているそれ取り上げる。
(電源どこだろ……。)
それを眺めていたら、肩にあたたかいなにかがのしかかってきた。
「け、研磨……?」
孤爪は彼女の肩にもたれかかったまま、寝息を立てている。
(顔近い……。まつ毛ながいし、肌きれいだし、髪さらさら……。)
至近距離で眠る彼が、いつもの彼よりずっと幼く見えてしまう。
(研磨ってこうして見ると、かわいい系なんだよね。
クラスにいるときとは全然ちがう。みんなにももっと研磨のこと知ってほしいけど、そしたら絶対人気者になっちゃうんだろうな。)
そこまで考えて、凪沙ははっとする。
(なに考えてんの私。これじゃ研磨に執着してるみたいだ。
黒尾さんじゃあるまいし……。)
凪沙は小さく息を吐いて自分を落ち着ける。
それから、身動きが取れず、どうしていいのか分からずに途方に暮れた。