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【ハイキュー】ギフト

第10章 宮城遠征


「はい。」

孤爪は自販機で買ったお茶を彼女に差し出す。

「ありがと。」

それを素直に受け取ってお礼を言った。孤爪は自分の分のペットボトルを開けて口をつける。

ベンチに並んで腰かけたが、孤爪はすぐにゲーム機を取りだす。

凪沙がペットボトルの蓋が開かなくて苦戦していると、見かねた孤爪が黙って手を出した。

「え、開けてくれるの?」

何も言わずにカチっと蓋を開けてそれを彼女に戻した。

「ありがとう。」

「……うん。」

薄暗い廊下で、孤爪のゲームの明かりだけが眩しい。

特に会話もないまま、凪沙はあったかいお茶を喉に流し込んだ。

「合宿って、いつもこんなカンジなの?」

「うんわりと。トラははしゃいでうるさい。
夜久さんは場合によるけど、クロが挑発するとすぐのっちゃうし。
海さんは逃げるし、福永と俺は大体すぐ寝る……。」

ゲーム機から目をそらさずに孤爪はぽつぽつと話す。

「そっか。」

「でも試合でみんな疲れてるし、そんなに遅くならないうちに寝るから。大丈夫。」

孤爪は眠そうにあくびをした。

「そうなんだ。……みんなのああいうの、私まだあんまり慣れてなくて。どうしていいか分からない。」

「怒っていいと思うよ。みんなナギの言うことなら聞くだろうし。
俺もみんなが大人しくなってくれたら嬉しいし。」

うとうととしながらもゲームは続ける孤爪。

「そうかな。衛輔にはなんでも言えるんだけどなあ。
まだ少し黒尾さんとか怖いなって思う時あるし……。」

「クロ?クロなんて別に怖くないよ。」

「そう?何考えてるか分からないって言うか。怒ったら怖そう……。」

凪沙はまだ少し暖かさを保ったペットボトルを両手で包んだ。

「クロは少なくとも女の子には怒らないから大丈夫だよ。」

「あ、確かにそういうカンジはするんだけどね。」

凪沙はそこで少し言葉を切った。

(女の子だから、マネージャーだから、っていう特別扱いみたいなの、少し寂しいなって思う時があるんだよ。
なんて言ったら、研磨はめんどくさいって言うんだろうな。)

喉まで出かかった思いは、声に出さずにそっと呑み込んでしまう。
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