第10章 宮城遠征
部屋のドアをパタンと閉めて廊下に出ると、薄暗いそこには凪沙の姿があった。
きっと中の会話が聞こえて入るに入れないでいたのだろう。
「ええと……。」
「今、入らないほうが良いと思うよ。」
「だよね。」
「あ、でもナギが入れば収まるかもしれないけど。」
「いや、遠慮しとく……。」
風呂から戻ってきたらしい彼女はシャンプーの香りを纏っていた。
「研磨はどこいくの?」
「クロたちが静かになるまで下でゲームしてくる。」
ポケットに手を突っ込んで歩き出す孤爪。
「こんなとこにいつまでもいると風邪ひくよ。下に自販機あったでしょ。温かいのでも飲んで待ってなよ。」
「あ、うん。そうする。」
そっけない口調ではあったが、気遣ってくれたのは嬉しかった。凪沙は彼の後ろ追いかけた。
(最初は苦手だったけど、今は部活のメンバーの中で一番落ち着くかもしれない……。)
凪沙は少し前を歩く猫背を眺めながら心の中でそう思った。