第10章 宮城遠征
「なんだ、凪沙は寂しいのか。」
「寂しくない。男なんて信用ならないってだけ。」
「……分かった分かった。大丈夫、いつかお前のこと一番って言ってくれる男が現れるよ。兄の俺が保証する。」
そう言って凪沙の頭をポンポンっと叩いた。
「衛輔に言われてもなあ。」
見てもいないのに付いたままだったテレビをリモコンで消しながら、凪沙はふと気になったことを口にした。
「そういえば衛輔って、どんな女の子がタイプなの?」
「俺より身長が小さい子。」
即答する衛輔に、凪沙は若干呆れた。
「うわ、切実……。」
「まあ実際、女子で俺より大きな子ってそんなにいないんだけど。
バレー部いると小さい小さい言われてムカツクけど、それ以外の時はそんなに気にしてないし。」
衛輔は凪沙の隣に座る。
「あ、そうなんだ。」
「ほら、このサイズだからこその女子ウケの良さも自覚してるからさ。」
「あざとい……。」
「凪沙は?どんな男がタイプなの?」
「……そういえば考えたことないなあ。ずっと男の人嫌いって思ってきたから。」
うーん、と指で髪の毛をいじりながら考える。
(髪触るの癖なのかな。)
うっかりすると彼女に触れたくなりそうなので、視線を逸らす。
「あ、でもね。衛輔みたいな人だったらいいなあ。」
「は。俺?」
「うん。私、まだ男の子は怖いし苦手だなって思うことも多いけど、もし付き合うなら衛輔みたいな人がいい。」
そう言ってえへへと笑う彼女を見て、衛輔は顔が熱くなるのを感じた。
(やばい、嬉しい……かも。)
ゆるむ頬をごまかすために、凪沙の髪をぐしゃぐしゃと撫で回す。
「お前、見る目あるな!俺みたいな男だったら、兄としても安心して任せられるしな。」
「いたいよ、衛輔……。」
少し乱暴になでられながら、凪沙は言葉とは裏腹に楽しそうに笑った。