第10章 宮城遠征
「それにしてもさ、凪沙も成長したよなー。男だらけの合宿に付いてくるなんてさ。」
衛輔は茶碗に山盛りになったごはんを食べながら話し始めた。
「バレー部のみんなは良い人だから。」
凪沙は野菜炒めの中から肉を避けて食べるので、肉も食え!と衛輔が注意する。
「山本のクラスメイトに襲われかけたって聞いたときは、もう学校来ないんじゃないかと思ったけどな。」
「あー、そんなこともあったね。あの人1年のテニス部の子と付き合い始めたらしいよ。男なんてそんなもんだよね。」
「うわ、それは確かに切り替えはやいな。」
衛輔は呆れた声を出すが、凪沙はニヤリとして言い返す。
「衛輔は軽音部の女の子に告られたらしいじゃん。しかも断ったらしいじゃん。」
「は!?なんで知ってんだ、黒尾か!!」
「黒尾さんに知られた時点で部の全員に広まるよね。あの人おしゃべりだから。」
凪沙は味噌汁をすすって、あ、しょっぱかったかも。と漏らす。
「まじかよーあいつ明日絞める。」
「黒尾さんが、衛輔はリア充だって言ってた。モテるんだね。
ねえ、どんな子だった?なんて告白されたの?」
興味津々で質問してくる凪沙に、彼はやめろと真面目に注意した。
「うるせーよ。真剣に告白してきた子の事ネタにする趣味はねえよ。失礼だろ。」
衛輔がそう言うと、凪沙は黙って彼の顔を見つめた。
「……なんだよ、俺の顔になんかついてる?」
「衛輔がモテるっていうの、納得した。」
素直に思ったままを口にした凪沙だったが、衛輔は照れて顔を赤くした。
「うるせー!」
「なんで怒るの。褒めたのに。」
凪沙は澄ました顔でご飯を食べ終えて食器を片づけ始めた。
(親がいないと、こういう話もできるんだなー。)
衛輔は残りのおかずを口に入れた。