第6章 ハロウィンの夜に
ハロウィンも近づいてきた10月下旬の日曜日。
キラは温室に来ていた。
ダモクレスとセブルスは毎週日曜に温室でティータイムを取っていたので、キラは毎回お邪魔させてもらっている。
キャリーとアニーは虫が苦手なようで、温室まで来ることはなかった。
いつものようにセブルスがカウチ等を魔法で大きくし、三人は腰を下ろした。
ずっとおしゃべりしているわけではなく、花壇の手入れが終わったらそれぞれ読書をすることもあれば、昼寝をすることもあった。
ダモクレスは研究のことを考え出すと頭が他の世界に行ってしまうようで、ブツブツ独り言を言いながら羊皮紙になにやら書き込んでは消し、書き込んでは消し、を繰り返すこともしばしば。
セブルスは元々無口だが、キラが授業でわからないことがあると言えば厳しくも丁寧に教えてくれたし、気が向けば新しく考え出した魔法を見せてくれることもあった。
キラにとっては良き師である。
今日も、セブルスの淹れてくれた紅茶を口にしながら、それぞれの時間を過ごしていた。
温室の居心地の良さにキラはうつらうつらし始める。
そのときだった。
「そういえばキラ、ハロウィンはどうするの?」
「――え?」
唐突なダモクレスの問いに、眠りの淵から引き戻されたキラはポカンとする。
「ハロウィンの仮装だよ。ホグワーツでは毎年ハロウィンパーティをするんだー」
確かにそれは知っている。
キャリーもアニーも何の仮装をするか考えあぐねていたからだ。
先週、やっと二人は何を着るのか決めて、家に手紙を書いていた。
そろそろ梟便が届くだろう。
実家に衣装を用意してもらうのが常のようだったので、キラは見るだけのつもりだった。
日本に居た頃、祖母がジャック・オ・ランタンを用意していたのを見ていただけで、仮装なんてしたことがなかったからだ。
しかし、もしかして仮装しないのは自分だけなのだろうか。
「全員が仮装するんですか? …セブルスも?」
「全員ではない」
キラの質問にセブルスは間髪いれずに答えた。
つまり、自分はしないということだろう。
(吸血鬼とか似合いそうだけどなぁ)
日曜はいつも私服だが、平日だとローブが蝙蝠のように見えるのだ。