第21章 第二部 再会
「照れなくてもいいのに」
白い歯を見せて笑う彼に溜息が出る。
「まぁそんなところも僕は好きだけどね」
「……」
「YESと、いつ言ってくれても構わないんだよ」
誰が言うか、とキラはロックハートを睨みつけた。
この男は一年ほど前からキラに恋しているらしいのだが、並べ立てられる美辞麗句はもちろんのこと、どんな女の子にも鼻の下を伸ばすような人物のため全く信用ならない。
目立ちたがり屋の彼は単にセシリー・ブルームの孫と付き合っているというステータスが欲しいだけなのだ。
「その涼しい瞳も綺麗だね。そのエメラルドの奥に、僕が映っている……」
「……」
マダムピンズの無言の圧力を感じて、キラは自分は関係ないとばかりに本に極限まで顔を近づける。
後十秒もすれば、ロックハートはいつものように追い出されるはず。
しかし、今日はそうではなかった。
静かになったロックハートはキラに話しかけるのを諦めたのか、読書を始めていた。
(……いつもそうやって黙ってればいいのに)
見た目だけなら悪くはない。
(良いとも思わないけど!)
勉強の邪魔をしないなら構わない。
時折チラリと投げられるウィンクに気づかない振りをしながら、キラは愛用のガラスペンを動かすのであった。