第18章 背伸び
新学期が始まって一週間後にセブルスの誕生日がやってくる。
キラはジェームズに言われてから読むようになった日刊預言者新聞の連載小説コーナーを切り取りながら、ため息をついた。
「ため息ついて…どうしたの…?」
「え、ああ、うん…」
「あらキラ、読まないなら先に読んでもいいかしら?」
「うん、どうぞ」
切り取ったばかりの紙片をキャリーに渡す。
「あ、これに貼っておいてもらえる?」
「ええ、いいわよ」
キラからスクラップブックを受け取ったキャリーは、早速新しいページに切り抜きを貼り付ける。
「キラ…?」
「ああ、アニー…私、また壁にぶち当たって…」
「壁…?」
「去年も長らく悩んだんだけど」
「…あぁ、誕生日プレゼント…?」
「そう…」
「クリスマス前に決まったって言ってなかった…?」
「決まってるの、決まってるんだけど…本当にこれで良かったのかなって…」
キラは頭を抱えつつ、スリザリンの長テーブルの先に、朝ごはんを食べるセブルスを目の端に捉えた。
用意したプレゼントは湯呑み、である。
日本茶や煎餅を気に入っていたはずだ。
正直、ティーカップで飲む緑茶はなんだかお茶じゃない、とキラは思う。
だから、ちゃんと湯呑みで飲んで貰いたい。
そう考えて、祖父に選んで貰ったものを日本からこちらへ送る手筈を整えた。
(でも…貰って嬉しい…かなぁ?)
これから約半年、セブルスがホグワーツにいる間はキラが日本茶を煎れることはできる。
しかし、その後は?
どう考えても再びこの湯呑みが使われることはないだろう。
(もしかしたら、自分で取り寄せたり……しないか…)
紅茶党だしなぁ…と考え出すと、このプレゼントが正解だったかわからなくなってしまったのだ。
「ンン…心がこもっていれば、何でも嬉しいと思うわ…。だって、キラが一生懸命考えて選んだプレゼントでしょ…?」
「うん…」
アニーがほんの少し首を傾げてキラを見る。
そうかなぁ、と思いかけた、そのとき。
突然視界が遮断されて、目の前が真っ暗になる。
「わわっ」