第17章 エメラルドの輝き
曾祖母は、聞いていた通りかなりの高齢であった。
百歳を超えているらしく、誰も押す人がいないのにすいすい動く車椅子に乗っていた。
屋敷にキラを呼べないことを一番最初に謝ってくれた。
祖母とそっくりなエメラルドの瞳は、老いてもなおキラキラと力強い。
ブルームブランドを守ってきた強い女性なのだな、と思わざるを得なかった。
『お前が、ブルームを継ぎなさい。ヴァイオレット…お前の母親では、ブルーム家というものは少々荷が重すぎる。長くは続けられんだろう…魔法の使えないヴァイオレットでは、な…』
父と母のいないところで、曾祖母はキラの目を見てはっきりとそう言った。
曾祖母の目には、キラがどのように映ったのかはわからない。
けれど、おそらく。
スクイブの部類に入ってしまう母を案じてのことだろうということはわかった。
『まだ幼いお前から母だけでなく、父まで取り上げてしまったことを、とても後悔しているよ…。まさかこんなに老いぼれてまで、まだ生きているとは思わなかったからねぇ…』
しわくちゃの手が、ぶるぶると震えていたのをキラはきっと忘れないだろう。
「うん、やっぱり優しいおばあちゃん、って感じだったよ。しわっしわだったけど」
「あら、そんなこと言っちゃ失礼よ」
くすくす笑いを漏らしながらキャリーはキラの肩を小突いた。