第16章 追いかけたい
セブルスとダモクレスにお礼を言おう!と意気込んだものの、朝食時には彼らの姿を見つけることができなかった。
「アニー、見える?」
「うぅん…」
お昼休み、キラは二人にも手伝ってもらってセブルスとダモクレスを探す。
「まだ来てないのかしら」
「そうかも…」
焼とうもろこしを齧りながら、キラは大広間の出入り口を見張っていた。
と、スラグホーンがのしのしと大きなお腹を揺さぶりながらこちらへ向かってくる。
「Ms.ミズキ!」
名前を呼ばれて、キラはハッとして立ち上がる。
「スラグホーン教授、もしかして――」
「ああ。お待ちかねのアレがようやく届いたよ」
「本当ですか!」
「随分時間が掛かってしまったが、まだ間に合うかね?」
「もちろんです。お手数をおかけしました」
ペこリと頭を下げると、スラグホーンは口の上の髭をなで付けながらホッホッと笑う。
「なに、他ならぬ友人の頼みだ。いつでも頼ってくれて構わない」
「ありがとうございます。それで、花は」
待ち切れない、と言った様子のキラにスラグホーンはさらに笑みを深くする。
「研究室にある。放課後取りに来なさい」
「はい!!」
「ではまた後ほど」
「ありがとうございます!」
再び深々とお辞儀をして、スラグホーンの後姿を見送る。
(やっと届いた…!!)
グッ、とガッツポーズをするキラ。
それを見たキャリーとアニーはぽかんとした表情だ。
「一体、何が届いたって言うの?」
「トリカブトの花がやっと届いたの!」
「「トリカブト??」」
二人の声が完璧に被る。
「うん。ダモクレスが新しい魔法薬の研究の材料にしたいから、って頼まれてて。日本の品種と中国の品種を送ってもらったの」
「まぁ、大変そうね」
「すごく時間掛かったよ…。本当9月中には届くはずだったんだもん」
「ねぇキラ…」
ツン、とアニーに袖を引かれて、彼女が指差す方へ目を向ける。
(あ……)
セブルスとダモクレスが大広間に入ってくるのが見える。
「いってらっしゃい」
「頑張って…」
二人に背中を押され、キラはもらった道具入れを抱えて走り出した。