第3章 出会い
目を開くと、まだ見慣れぬ深緑が広がっていた。
(――今、何時だろう)
窓の外は湖の中。日の光は入らない。
壁にかかった魔法を動力とする時計に目を凝らす。
針は朝の六時を示していた。
キラは仰向けの状態から身じろぎして横向きになってもう一度目を瞑った。
入学式の日から数えて五日目。
今日は日曜日で、昨日に引き続き休みの日であった。
昨日はゆっくり二度寝をして、大広間でお昼ごはんを食べた後、祖母に手紙を書いた。
翡翠は今頃どの辺りを飛んでいるだろうか。
無事に着くといいのだが。
手紙を書き終えた後は、キャリーとアニーに手伝ってもらって授業の復習をした。
スリザリンの生徒は家庭教師をつけてすでに魔法を学んでいる者も少なからずおり、呪文学の授業では多くの生徒が羽を浮かせることに成功していた。
キラはというと、羽がふるふると震えるだけで一向に浮き上がるそぶりを見せぬまま、授業終了の鐘が鳴ってしまった。
闇の魔術に対する防衛術は呪文学の授業が進んでから実践を行うとのことで、座学がメインであった。
教科書を見ながらどのような闇の魔術があるのかを学び、どのように対処していくのか、というのをまずは理屈で覚えるようである。
薬草学は想像通り楽しい授業で、キラは嬉々として土いじりをしていた。
魔法史はとにかく眠たく、瞼が落ちてこないようにするので必死であった。
そして変身術では全員に一本マッチが配られ、それを針に変えるという課題が出されたが、何度呪文を唱えても何の変化も見られなかった。
キラは魔法を使う授業で何一つ上手くできなかったのだ。
祖母と一緒に教科書を読んではいたが、実践ともなるとさっぱりだった。
思い出してしまうと眠れなくなってしまうもので、キラはそっとベッドを抜け出し、音を立てぬように着替え始めた。
早朝に部屋を出てはいけない、という規則はなかったはずだ。
キラはホグワーツ城を出て温室へ向かうことにした。