第14章 アプリコットの夢
もしかしたら、一番と二番の繰り返しだったのかもしれない。
けれど、そうじゃなかったような気もして。
(なんだったっけ…思い出せない…)
キラは何度も同じ部分を歌いながら、三番と四番を思い出そうとする。
出てきそうで出てこないので悶々とする。
そのお陰で、キラは二人に釣られて眠ることなく無事に約二時間後、ダモクレスに魔法薬を返すことが出来たのであった。
ゆっくりと眠りの海に足元から沈んでいくのを感じながら、セブルスは誰かの歌声を聴いていた。
誰が歌っているのか、どんな歌詞なのかも分からない。
けれどそのしっとりとした優しい声は決して不快なものではなく。
するすると彼を夢の世界へと引き込んでいく。
(あれは…マグルの歌か――――)
夢の中で、幼いセブルスはリリーと一緒に寝転んでいた。
『Rock-a-bye baby,on the treetop――』
眠れないとき、ママがいつも歌ってくれるの。
リリーはそう言って、その歌を口にする。
歌詞は何とも恐ろしいものだったが、不思議なことにとても穏やかな気持ちになるメロディだった。